老年看護の主な実践

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(1) 認知症

認知症になると、一度獲得した知能が低下したり、失われてしまいます。

① アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症

●アルツハイマー型認知症(Alzheimer's disese/AD)

発病年齢: 高齢になるほど多くなります。

性別: 女性に多いです。

検査所見: CTやMRIで嚢萎縮・脳室拡大がみられます。

経過: 進行性です。

性質: 全般的認知症、高度の認知症です。

自覚症状: 少ないです。

特徴的な症状: 多幸、無関心、多動、徘徊などがあります。

人格: 症状の進行に伴い崩壊します。

既往歴や誘因となるもの: 若年期偏食、魚・野菜嫌いが多いといわれています。

●脳血管性認知症(Vascular dementia/VD)

発病年齢: アルツハイマー型よりも若年に多いです。

性別: 男性に多いです。

検査所見: CTやMRIで多発性の小梗塞がみられます。

経過: 動揺性、段階的進行します。

性質: まだら認知症です。

自覚症状: 初期に頭痛、眩暈、しびれ、耳鳴、不眠、物忘れ、抑うつ気分などの症状があることがあります。

特徴的な症状: 感情失禁(些細なことで大喜びしたり激怒したりする症状)があります。

人格: 比較的保持されます。

既往歴や誘因となるもの: 脳卒中発作、高血圧、新疾患、糖尿病、高脂血症など。

② 認知症の評価と判定

改訂長谷川式簡易知能評価スケール、柄澤式老人知能の臨床的判定基準があります。

③ 認知症の看護

・自尊心を尊重します。
・否定をせず、相手に合わせます。
・叱責したり、説得したりはしません。
・失敗行動の背景や動機を把握します。
・徘徊を予防するため、時間を決めて散歩に連れ出します。
・危険ではないこと、他者に多大に迷惑なことでなければ柔軟に受け止めます。
・楽しく学ぶことができ、満足が得られる刺激を与えます。
・生活環境を整備し、安全を確保します。
・転倒を防止します。
・生活環境の急激な変化を避けます。

(2) 転倒の予防

① 転倒の要因・背景

老化による運動機能・調節機能、感覚機能・適応力・判断力などの低下のため、
高齢者は転倒しやすくなります。
そして、疾患によって、或いは全身状態の悪化により、機能や判断力がさらに低下します。

② 転倒しやすい場所や時間

高齢者が転倒しやすい場所は、照明が不十分で暗い場所や、
段差がわかりにくい場所などです。
居室や廊下、浴室、階段、トイレ、ベッドサイドなども転倒しやすいので、
環境を整え、安全を確保します。

また、夜間や明け方などが転びやすい時間帯ですから、
寝起きの時間帯に最も注意が必要です。

③ 転倒予防のための援助

転倒予防のために看護師ができる援助はたくさんあります。

・運動機能や調節機能、感覚機能、適応力、判断力、疾患や治療状況について、
生活習慣についての情報を収集し、転倒の危険性について分析します。

・室内の家具の配置の工夫や、日常生活用品の整理、床面の濡れ防止、障害物の除去、
手すりの設置や照明器具の設置など、室内の環境を整備します。

・運動能力が認識できているかを確認し、適した行動が取れるように注意します。

・杖や歩行器、車いすなどの歩行補助具を、正しく使用することが出来ているかを確認します。

・高齢者のペースにあわせ、急がせないようにします。

④ 転倒してしまったときの看護

まず、身体的状態を観察し、状態に応じた処置を行います。
そして、転倒したときは大丈夫でも、後になって症状が出ることがあるので、
経過を観察します。特に頭を打った時には注意が必要です。

転んだことによる精神的ショックを受けている高齢者も多いので、
精神面のケアを行い、転倒の再発を予防します。

(3) 肺炎

肺炎は、高齢者において死亡率の上位を占める病気です。
高齢になると、気道防御反応機能が低下したり、免疫能が低下するので、
肺炎を発症しやすくなります。

① 肺炎の感染経路

高齢者の場合、「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」が最も多いです。

② リスクファクター(危険を引き起こす要因)

血管障害による咽頭・喉頭の筋肉の麻痺や長期の臥床、認知症などがあります。

③ 高齢者の肺炎の特徴

高齢者は自覚症状が乏しいので、本人の訴えのないままに症状が経過し、
発見したときには重症化している事も多いです。

通常は、発熱や咳や痰などの気道症状、呼吸困難、胸痛などの症状がみられますが、
高齢者の場合、症状が顕著に見られないことも多く、発見が遅れてしまいがちです。

高齢者が肺炎になると、食欲不振や下痢などの消化器症状、脱水、低酸素による意識障害が高頻度に起こります。

④ 肺炎の診断

肺炎の診断は、胸部X線写真、胸部CT、末梢血検査、喀痰(かくたん)・気管内採痰による起炎菌を同定します。

⑤ 肺炎の看護

1) 観察

呼吸器症状、食欲不振、活動低下、精神機能の異常、呼吸数、脈拍の増加を観察します。

2) ケア

安静ケアと栄養のケアを行い、セルフケアを援助します。
口腔ケアは、唾液の分泌が低下していたり、患者さん自身では不十分なので看護師がサポートし、
歯磨を励行します。
気道浄化や酸素呼吸の管理、関節可動域訓練の継続を促し、早期離床を目指します。

3) 感染症予防

インフルエンザの感染を予防したり、誤嚥の予防をします。

4) 誤嚥性肺炎の予防

嚥下機能障害があり、誤嚥性肺炎を起こしやすくなっている患者さんに対しては特に、
誤嚥を予防するためのケアを行います。

誤嚥を予防するためには、食事の粘性を調整し、トロッとしてべとつかず、
噛み切りやすくて適温、性状が均一で口の中でまとまりやすいものを工夫します。
市販のトロミ調整食品を混ぜるのも一つの方法です。

食事の時には、一口摂取量を元にスプーンの大きさを決め、違う食品を交互に提供し、
食事を楽しむことができるような工夫をする事も大切です。

食事の後には必ず口腔ケアを行い、口腔内雑菌を除去します。

食後数時間は坐位を保ち、気道への口腔内細菌の侵入を最小限にします。

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